ひさびさに真剣に読んでいる本。
阿部和重のピストルズ。びわとこの本は不思議なくらい、よく合う。
家の血と因縁。びわはアプリコットでも桃でもなく、マンダリンでもない。
びわはびわ。けして明るいイメージがパーッと湧き出る実ではない。
実家の本家の庭に大きなびわの木があって、収穫するのが習わしになってきた。
私のトラウマを知ってか知らずか、夫はびわが大嫌い。
びわを食べさせようとすると彼にしては珍しい小声で「び、びわは嫌い…」と抵抗される。
一人暮らしの大学時代に段ボールにつめられたびわをろくに受け取らず
半分以上腐ったびわがびっちり詰まったまま、実家に箱が舞い戻るという事件があった。
いや、記憶違い。宅配会社から多分腐りかけていると、実家に電話が入ったのだった。
亡き祖父に電話口で怒鳴りちらされて、しばらくずっと耳鳴りがしていた。
今年は豊作で大ぶりのびわがこれまた段ボール箱にびっしり。
箱詰めびわ歴13年目にして、はじめてびわパイという形でポジティブに
昇華できたように思う。パイにすることで現代的になり、しかもなかなか美味しい。
材料はパイシートと砂糖、レモン汁のみ。
味はアプリコットとそっくり。でもアプリコットよりやさしい甘さ。
やさしければいいというものではない。つかみどころのない甘さ。
ピストルズでいうところの芳香は私にとってこの香り。
阿部和重も
twitterの模様です。